※R18+ホモ注意のおっさん部屋


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| 2010/06/04 |
夢占
※グレパラ2・ビッグビルディングネタ
※ロシキノ



書類に目を通していたロシウ補佐官が、ふふっと笑った。ちなみに今、彼が手にしている書類は、来年度の宇宙開発計画の骨子であって、笑いどころなど全くない。私は驚いて顔をあげた。ロシウは私の視線にハッと気付いて、口元を手で覆って笑いを押し殺そうとしたけれど、堪えることで逆に吹き出してしまった。

「…っ、ぷっ…くく」
「ど、どうなさいましたか、補佐官」
「いや、何でもない」
「なにか、書類に不備でも」

席から立ち上がる私を、補佐官が口を隠していた手を上げて制した。

「本当に何でもないんだ」
「でも…」
「……いや、すまない。思い出し笑いだ。仕事に集中するよ」

仕事中に、この人が余所事を考えるなんて珍しい。私は何がそんなに彼を笑わせるのか、知りたくてたまらなくなった。だけど、きいてみてもロシウは「何でもないよ」と書類を立てて顔を隠す。私は書類越しにじっとりした視線を送った。ロシウは無言のプレッシャーに負けたみたいに、顔を見せないまま白状した。

「夢だ。すごく変な夢を見たから、それを思い出して」
「夢、ですか…」
「そう」
「どんなですか?」

ロシウはしばらく言い淀んでいたけれど、ここまで来たらヤケだと言わんばかりに、一部始終を一気に語った。

「腕が4本あるガンメン…あれ、エンキドゥドゥなのかな?そんな感じのロボットが襲ってきて、僕とシモンさんがグレンラガンに乗って倒すんだ。敵は3体で、合体したりして、だけど合体したらビルみたいになって攻撃もしてこないし、ドリルで倒して、めでたしめでたし」
「はい…」

それのどこが変なんだろう。訝しく思う気持ちが声に出た。ロシウは納得がいかない私の様子を見て、真面目に細部を説明し始めた。

「でも全体的にヘンなんだ、コクピットは屋敷のなかにあって、やけに広々して豪華だし、ロージェノムは宇宙に浮かんでるし…。襲ってくるガンメンも、カエルっぽかったり、歯の矯正をしてたり」
「矯正?誰がですか」
「だから、そのガンメンがだよ」

歯の矯正をしてるガンメンを想像して、そして真顔で笑いどころを説明するロシウが可笑しくて、私もぷっと吹き出した。するとロシウは、うんうん可笑しいだろうと、なぜか嬉しげに頷いて、さらに言った。

「それにシモンさんの服もヘンなんだ。ゴーグルしてるのにフリフリしてて…。ヨーコさんもやたらに……ええっと…その…」
「ヨーコさんはどんな服なんですか?」
「……いや、どんな服だったかな。忘れた」
「じゃあ、ロシウは?」
「僕、僕は………、うん、僕も、どんな、格好だったか、忘れたな」

そんなにギクシャク答えなくったって。嘘のつけない人。ロシウも一緒にフリフリしてたのかしら。ヨーコさんはきっと、色っぽい格好だったんだろうなあ。胸の隅が、なぜかチクリと痛んだ。ヨーコさんはロシウの夢に現われるんだ。そして私は、あなたの夢に出てきたことなんか、ないんじゃないかな。多分、きっと、ないわね。そりゃそうよ、私はただの補佐官の補佐だし。

私の短い沈黙に、ロシウは話の先を促されたと思ったらしい。「それから、うーん」と夢を反芻して、さらにヘンなところをピックアップした。

「それにグレンラガンもなんだか、気持ち悪いんだ。人のカタチで、目がひとつしかなくて」
「そっ、それは…確かに少し…」
「合体したガンメンっぽいものを倒すとき、その目がぶよぶよと増えて、そこからドリルが出るんだ」
「……それ、本当にグレンラガンなんですか?」
「えっ、ええっと…だって僕らが操縦してたし、多分、そうだと思うんだけど」

ロシウは急に自信なさげに語尾を濁す。少し口調が幼くなるのがかわいい。対する私は、少しお姉さんぶって言ってみた。

「その夢を分析してみますと…」
「え、そんなことできるのか?」
「ええ」

占いとか夢判断とか、女は大好きなんですから。私は目の前のパソコンのネットを立ち上げて、ブックマークに入ってる夢占いのサイトを開いた。聞き取っただいたいの粗筋を打ち込んでみたら、診断結果が出た。あら、なんだか図星っぽい。ズバリすぎて、気を悪くしないといいけれど。私はちらりとロシウの顔色をうかがってから、結果を読み上げた。

「えーと…『この夢は、周囲と自分を比べたり、意識する表れです。周囲と自分の差を意識したり、特別な相手に対する負けたくないという感情、あなたの気持ちが上昇の傾向にあるようです。特にライバルや気になる相手に対する感情は、極端に強いものである場合があります』」

ロシウは「なんでそんなことになるんだ?」と笑って言ったけれど、心当たりがあるのか、その笑顔は少し引き攣っていた。私は「さあ…?」と返し、少しビクビクしながらも続きを読んだ。シモンさんがライバルというのは、ちょっと違う気がするけれど、強く意識してる相手であることは確かだ。

「『その意識は向上心であって、決して悪いことではありません。競争心があなたを成長させる原動力になるなら良いことです。ただ、他人より遅れをとってしまうことへの過剰な意識や不安、ライバルへの度が過ぎる競争心は問題があります。他人との優劣にこだわりすぎると、少し劣っただけで卑下し自信を失い、優ると相手を見下す傲慢さが現れたりと、本来のあなたの良さが出ないばかりか、マイナス面が目立ち、損するばかりで得することは何もありません』…」

私が読み上げている最中に、ロシウは怪訝そうな顔で立ち上がり、私のパソコンの画面を後ろから覗き込んできた。そして文章の続きを自分で読んだ。

「……『もし過剰な競争心があるなら気持ちを抑圧する必要があります』…か。」

その声は、今まで聞いたこともないような寂しげな声だった。寂しそうで、でもちょっと可笑しそうな、切ない声だった。おそるおそる振り返ると、じっと画面を見ていたロシウは、ゆっくり私と視線をあわせて訊いた。

「君もそう思うかい?キノン」

すぐに首を振ろうと思った。でも、この診断が当たってるように思ったのも本当だ。愛想で首を振るのは、かえってロシウに不誠実だと思った。否定も肯定もせずに固まってる私に、ロシウは笑って「僕も、当たってると思うよ」と苦笑した。それからまた画面を眺めて、ぽつりと言った。

「不思議だな。みんな、僕が何を考えてるか分らないって言うのに。こんな占いに言い当てられるなんてね」

ロシウは孤立しはじめていた。シモンさんを実戦から…グレンラガンから遠ざけ、政治のほとんどを一手に行っていることを、専横だという人もいた。でも、そんなんじゃない。ロシウは誰よりも、この世界を守りたいだけなのに。シモンさんが、シモンさんたちと築いた、この空のもとで暮らせる世界を。ロシウは診断結果を読んでしまうと、私は打ち込んだ「夢の内容」を読んだ。そして、ふふっと笑い、見たばかりの夢を懐かしげに語った。

「そのエンキドゥドゥみたいなのに勝ったあとに、三人で記念撮影をしたんだ。本当に変な夢だろう?僕は戦ってる最中に、頭の上に照明が落ちてきたりしてフラフラしてて。シモンさんに肩を借りて、なんとかグレンラガンの外へ出るんだ」

ロシウは手を伸ばして、内容を打ち込む欄へそれを書き足した。私は座ったまま椅子を横へずらして、黙ってロシウの横顔を見つめた。幼い頃の面影が、その横顔に重なった。

「それでね、シモンさんが真ん中で、ヨーコさんと僕が左右に立って、ピースなんかして写真を撮るんだよ。本当に変な夢だ。でもすごく楽しかったな。楽しかった。うん、愉快だったよ…」

“楽しかった”とロシウは、二度その欄に書き込んだ。そして、ムキになって書き足した自分を笑ってから、私の方を見て驚いた。

「キノン。どうしたの」
「…だって」
「どうして、泣いてるの、君が」

どうしてロシウしかいないんだろう。大グレン団はあんなに大勢いるのに、どうしてロシウだけがこんな重責を負わないといけないの。もっと年嵩の、しっかりした人がいれば。実務に向く人がいてくれたら。ロシウだってシモンさんと一緒に、笑ってグレンラガンに乗ったり、シャンデリアに頭をぶつけたり、敵を倒してピースしたりできたのに。私はぽろぽろ泣きながら笑った。

ロシウはそんな私を宥めるように笑って「どうしたんだ、本当に。泣くほど可笑しかったかい?」と言い、涙を拭ってくれた。私はその指が触れるとハッとして、「すっ、すみません」と立ち上がりながら、また身体を後ろへ引いた。慌てた脚が椅子に絡まり、椅子ごと倒れそうになった私を、ロシウの腕が引き上げてくれた。びっくりするぐらい近くに、ほっとしたロシウの顔があった。

「大丈夫?」
「…はい」

ロシウは笑い泣きに崩れた私の顔をじっと見てから、穏やかな目をして言った。

「…占いだけじゃないね。僕のこと分ってくれる人もいた」

それが誰を指すのか、私が分かる前に、ロシウは倒れた椅子を起こして自分の席へ戻ってしまった。そして何事もなかったかのように、また書類へ目を通しはじめた。私はぎくしゃくと椅子へ座り直して、開いたままの夢診断のページを見た。ロシウが追加した文章で、かちりと占ってみたけれど、結果は変わらなかった。私は密かにふっと笑って、そのページを消し、報告書を開いた。私は誰よりも、補佐官の気持ちの分かる補佐であろう。こんな占いになんか、負けやしないんだから。

ちらりとディスプレイから目線をあげてロシウの方をうかがうと、ロシウも書類の上からちらりと私の方を見て、私たちは静かに微笑みあった。





※参考サイト:ユメカルテ様:ttp://yumekarte.jp/
| 2010/06/04 |
グレパラ2

来ましたよ!来ました!デカい!
「いつもアマゾンさんは箱がでかいな〜」などと思いながらあけたら、箱いっぱいにみっしりと入っていた!
真ん中のグレーの箱にDVDとCDが入ってます。収録された作品、それぞれの書き下ろしDVD用イラストが入ってます。お好きなジャケットを入れてくださいってことよ!私はすかさずビッグビルディングにしました。
左側のが、設定資料集です。104ページの超ボリューム!なんか、アマゾンでお安くかってすみませんって気持ちになった。7作品の演出の方々へのインタビューと、絵コンテ、設定資料などなど。

設定資料などなどの感想
■THE SENSE OF WONDER
カミナがこんなセクシーコマンドーなお仕事をなさっているとは…。そしてヨーコがお父様につくられしエロテロリストだとは…。惜しみなく明かされる設定に激しく萌えつつも、自分がぼそぼそ書いてきたアニキと全然ちがうので、あれどうしたらいいんだろ、フライングしすぎました涙。
■チームイヌカレー
人類お父様化計画のずさんさ、お二人がいかにグレンラガンを愛しておられるのか、よく分ります、いやホント、これぞグレンラガンだと思った。そして今石監督のグレパラ見たかったには深く深く同意。
■さよならダイグレン
これだけの設定を、この短いフィルムに惜しみなく注ぎ込むこの何というか……愛だな…!!羊男のこと、ダイグレンが人のカタチ?をとってあらわれたようなものなのかなあと薄らぼんやり思っていたのですが、普通に迷い込んだ人のようだな。音楽と絵がとても素敵、紅の豚を思い出すかんじ
■ビッグビルディング
これにだけは…これにだけは、スタッフコメンタリーをつけて欲しかった!!しかしこんなに無茶苦茶なのに、イメージボードを見てると、サザビーズでこういう絵が高値で落札してるような気がするのがなんだか非常に悔しい。絵コンテの3枚目で茶ぁふいた。
■キラメキ★キヤルBOX
本気すぎる。すっごく楽しんで作られたんだな…というのが絵コンテからひしひし伝わってきて、読んでる方がニヤニヤしちゃいました。三姉妹バージョンも見たかった…。
■ガンメンファンタジア
こんな本気の設定資料を見せられたら、やっぱりイベントで笑ってしまったのは失礼だったのではないかと反省させられたけど、やっぱりその重量感あるとんでも合体をDVDで見ると、本気であればあるほど笑ってしまうのですすみません…。
■キタンゼロ
コンテではないんですけど、すしお氏の漫画みたいなスケッチが31枚も載っててカッコよすぎた。キングキタンにキタンがはじめて乗るまでの、キヤルの指立て→キヨウとキノンのナイスアシスト→ずさっと座るキタンの太腿 のシーンが好きすぎてエンドレスリピート

DVDとの大きさ比較

監督渾身のジャケット、すばらしいです!なにげにヨーコが3人も!と思ったら、ギミーとダリーの方が多いね…いや、アーテンが7人で最多だった笑。

最後の映像と思うと寂しいなんて昨日かきましたが、ここまでしてもらえたら、ファンとして満足するしかないな…という素晴らしいDVDでした。ありがとうありがとうスタッフのみなさま。お疲れさまでした!
| 2010/05/27 |
鳥籠
※The sense of wonderを見て書いたものの、1度きりのウロ覚えだったので、アニキの性格やら何やら違い過ぎてどうすべかと…。ううっ、こんな熱血アニキじゃないよね、シモンももっとこうこうね
※書き直したほうがいいな〜と思いつつ、最初だけのせてみます。






 乾いた砂と岩ばかりの干涸びた地平に、蜃気楼のように壮麗な都があらわれる。旅人はみな足を止めて目をこする。彼らはたしかに、この王都をめざして歩いてきた。しかしまさかーーここまで巨大な都だとは?
 遠く聞く、東の都の長城のような、堅固な土壁がその都をぐるりと囲んでいる。壁の向こうにはいくつもの尖塔(ミナレット)が見え、その中心には王宮が聳え立つ。壁の手前には満々と水をたたえた堀がある。荒野と都を隔てる城門がひらくと跳ね橋がかかり、駱駝を何頭もつらねた隊商が城内へしずしずと進んでいく。続いて入っていくのは旅芸人の一座。顔を薄いベールで覆い、けれど胸や臍はあらわな舞姫たちが、胡を弾いたり足首の鈴を鳴らしたりしながら城門をくぐっていく。

「アニキ…本当に入れるの?」 

 ぎっぎっと重く軋みながら跳ね橋がまたあがってしまうのを、葡萄の樹のかげから見つめる少年がいた。

「……」
「ちょっ、アニキったら!」
「おっ、何か言ったか、シモン」
「踊り子さんの胸に釘付けなってたでしょ、今」
「男なら当然だろが!」
「もー、やっぱりムリだよ、帰ろ…」
「ムリじゃねえっ!故郷を後にして半年、ようやくたどりついたんだ!お宝どっさりかっさらって帰らなきゃ男じゃねえ!」

 少年の隣には、胸を張って親指をたてる頼もしい(?)兄貴分がいた。アニキは本当に黙ってりゃ賢そうなのに、そしてすごく水も滴る男前なのに、なにかがとても残念だ。過剰な熱血がアニキを残念な美形にしているんだ。弟分であるシモンは、はあと溜め息をついた。そして改めて王都の警備をみた。
 跳ね橋の手前には、ゴリラの獣人らしい兵隊がぎろりぎろりと四方を睨みつけている。壁のあちこちに銃眼が掘られ、ときおりきらりと銃口が光る。尖塔からは鳥の獣人が飛び立ち、旋回しながら都の内と外を見渡している。

「どうやって入り込む気なの、アニキ」
「そりゃあ、お前…次に通りかかった隊商にでも紛れて」
「ダメだよ。さっき通行証を見せて人数数えてたよ」
「チッ、用心深えな。悪い奴ほど用心深え」

 思い切り舌打ちするカミナに、シモンは思わず笑ってしまった。

「何が可笑しいよ」
「アニキだって一応盗賊のくせに、全然用心深くないなあって」
「あったり前だろ!俺は正義の盗賊だからよ!」

 そんなのアリ?アリだ!二人は真顔で目を合わせ、それから同時にふきだした。カミナとシモンは同じ村で育った。貧しいが平和で穏やかな村だった。数年前、ロージェノムの軍勢に襲われるまでは。
 村は獣人たちに焼き払われ、わずかな食糧は奪われた。抵抗した村人はことごとく殺された。ようやく村に静寂が戻り、ちいさな手を握り合って穴から出てきた二人が見たものは、焼けくすぶる村と、折り重なって倒れた大人たちだった。そのなかには二人の両親も、いた。シモンは泣き、カミナは吼えた。その日から二人は、実の兄弟よりも強く結びついて生きてきた。

「しょうがないなあ」

 シモンは仕方なさそうに目を伏せて笑い、首からさげていた、ちいさなドリルを握った。それは、倒れた父親が握っていた形見だった。拳のなかで、ドリルはシモンに応えるようにヴォンと緑色に光った。

「掘るよ、アニキ。もっとやわらかい地面を探そう」
「おう、頼むぜ、兄弟!」

 パシンとカミナの大きな手に背中を叩かれ、シモンは顔を顰めつつも笑って駆け出した。その後をカミナが追う。茂った葉をそよがせる葡萄の樹が、二人の背を見送った。



***



 美酒なき宴に悦びなく
 恋なき春に蝶は舞わぬ
 月は留まれ朝陽はいらぬ
 君の愛しき手を取りて
 終わりなき夜を謳わずや

 歌姫は、鳥籠のような檻のなかで、どんな鳥も敵わぬ美声で甘やかに歌った。彼女の声にあわせ、その黄金色の髪がちりちりと、砂金を揺らすように光った。まさに花の顔(かんばせ)と呼ぶにふさわしい愛くるしい面立ち、けれどその眦はどこか虚ろで絡繰人形(オートマタ)のようでもある。

「実に、見目良い小鳥を手に入れられましたな」

 王の傍らで煙管を喫うのは、背に甲羅を背負った獣人である。王はといえば、鍛え上げられた武人のような筋骨隆々たる大男で、玉座の肘掛けにもたれながら、漂ってくる煙管の白煙越しに、ちかりちかりと瞬きながら歌う歌姫を眺める。
 歌姫は細い腕をひろげ、祈るように胸のまえで両手を重ねる。するとそこへぽうっと光の珠があらわれ、彼女の声にあわせて浮き上がり、膨らみ、散り散りに爆ぜる。
 煙管の獣人はその眩さに目を眇めながら、彼女には声がないのではないか、と思った。声のかわりにあの珠が歌っているのではないのかと。しかしそんなことはどうでも構わぬ。獣人はちらりと王の表情を盗み見て、胸中にひとりごちた。余人にはしぶい顔に見えるだろうが、長い付き合いの儂には判る。これはずいぶんとご機嫌麗しい。玉座の倦怠を、この小鳥が僅かなりとも癒してくれれば重畳というもの。
 琥珀と黄金の髪に真珠の肌。そして翡翠の瞳に紅玉の唇。その姿も歌声に勝るとも劣らぬ美しさだ。獣人は舐めるようにその姿を見つめ、やがて煙管の灰を煙草盆へカツンと落として王へ伺いを立てた。

「で、御印はどこへ入れましょうや」

 その低く笑うような声には、嗜虐的な暗さが滲んでいた。王は不快なのか熟考するのか眉を寄せ、それから「要らぬ」と唸った。獣人はおおいに驚いて目を丸くした。

「要らぬ、と仰せで」
「二度言わせるな、グアーム」
「はっ」
「印を入れては、飽いたときに売り渡せぬ」

 なるほど、と獣人は得心して膝を打った。王は重々しく頷き、二人の会話など耳に聞こえぬ態で歌いつづける姫へ視線を戻した。
 心地よさげに姫の歌声に耳を漱がせて瞑目する王を、獣人は横目に見た。王がこの姫に飽くことなどあるだろうか?万の金杯をして買い取った、この希有な宝を。そんなことがあるにしても、それはずいぶんと先の話になりそうだ。王の機嫌が良ければ良いほど、獣人も商人たちの上前を撥ねやすい。獣人は湧き上がる笑みを噛み潰して、また煙管に火をいれた。歌姫は枯れることのない声で、手首と足首に巻いた鈴輪を鳴らし、歌う。

 夜のなかの宴は終わりぬ
 天日は私の魂を奪う
 私は青き蝶になりて
 君の愛しき肩へ乗り
 夜の終わりを謳わんや

| 2010/05/26 |
ついに
明日発売日ですね!今日、発送メールが来たから明日には届く、はず!なぜかもう入手して楽しんでおられる方もいらっしゃるようで羨ましいいい。初見の方は、本当に感動と萌えと笑いみっしりですのでぜひぜひ御期待をと言いたい。これが公式最後の映像かと思うと寂しさもありますが、最後に相応しい素晴らしいものをありがとうございますとも言いたい。

続きからお返事です、ありがとうございます。
続きを読む
| 2010/05/25 |
5月20日
※追悼まにあわなかった
※悔しいので投稿日付をいじった



「そういや、相棒」
「なんだよ、相棒」
「今日はカミナの命日じゃないか?」
「おわっ、忘れっ」
「忘れていたのか、薄情な」
「忘れかけてたんであって、決して忘れちゃいねえ!」
「どうだかな」

そうはいってもあいつが死んでから、えーと…もう8年?9年か?忘れねえように祝日(?)ってか記念日にしようって話も昔出たけど、シモンが「やめよう」って言ったんだ。そういったときの奴の顔、俺は今でも覚えてる。そんなことされちゃ、余計に辛いって目で笑ったんだ。

「そうと分りゃ、花でも買っていくか」
「そうだな…じゃ、ゾーシィに電話だ」
「オッケー」

俺たちは毎年、誰が言い出すでもなく、カミナの命日には墓を訪れていた。毎年繰り返すうちに、次第に役割分担が決まった。酒はマッケン夫妻、つまみはダヤッカ夫妻、そして花束は俺とアイラックとゾーシィ。俺たちはガンバイクに跨がり、まずはまだ寝惚けてるゾーシィを叩き起こしに行ってから、三人で花屋へ向かった。俺たちは毎年、赤い花を買っていく。カミナのイメージなんだ、赤が。デカい花束をひとつ作ってもらって、俺たちは本日の主役の元へ向かった。


カミナの墓標の前には、もう何人かが姿を見せていた。マッケン、レイテ、そして子供たち。ダヤッカ、キヨウ、キヤル。リーロンとアーテンにテツカン。ジョーガンにバリンボー。それからギミーにダリー。見上げて手を振るダヤッカに手を振り返して、なんだか少ねえなと思った。そりゃそうだ。キタンがいねえ。仲良く揃ってきてたシモンとニアも。なんかやるせねえ気持ちになって、胸が詰まった。この追悼の日の中心になってた奴らが、いなくなっちまったんだ。

土煙を舞い上げて地上へ降りると、もう墓標にはいくつか花束が供えてあった。アイラックが一抱えもある花束を、カミナの墓標に捧げた

「ちょっと、三馬鹿」

振り返るとキヤルが膨れてる。

「何だよ」
「兄ちゃんの分の花束は?」
「………あ」
「あ、じゃねーよ!バカバカ!だーから、オレが買って行こうっていったのにダヤッカが…!」
「すまんすまん、まあいいじゃないか、ひとつあれば」
「ええーっ?」

悪ィ悪ィ、けど、キタンがいなくなったって実感がねえんだよ!あんまりカッコよくて、アンチスパイラルの見せた幻かと思っちまうほどで…。キヤルはダヤッカとキヨウに宥められても膨れっつらのままだ。弱った俺が、もう一度花屋まで戻って買ってこようかと思ったとき、シティから中型のガンシップが飛んできた。降りてきたのは、キノンとロシウだった。キノンは大きな黄色い花束を抱えていた。キヤルの顔がぱっと明るくなった。

「さっすが、お姉ちゃん!」
「こんなのでいいのかしら…」
「いいよ!早くこっち!」

キヤルにぐいぐい腕を引っ張っていかれるキノンを、後ろからロシウが優しげに微笑んでみつめている。ロシウが来るのって何年ぶりだ?俺はアイラックと顔を見合わせた。最初の数年は、ロシウも来てた。けど、多忙を理由に次第に顔を出さなくなった。いつまでも俺たちが大グレン団気分でいるのが、苦々しかったんだろう。今となっちゃ、その苛立ちも、ちっと理解できる、ような気がする。けど、ロシウも、アンチスパイラルとの決戦以降、悲壮なまでに気負った感じが抜けて、前みたいに俺らと笑ったり、冗談を言い合ったりするようになった。

「ローシウ」
「久しぶりのご参加だな」

俺たちに揶揄われて、ロシウはバツが悪そうに笑いながら振り返った。

「勘弁してください」
「いやいや、大歓迎って話」
「そうそう、なーんか今年、寂しいなって思ってたら、お前らが来てちょうど良かったよ」

両側から背中や肩を叩かれつつ、ロシウは「そうですね…3人、少ないんですね」と呟いた。その声があんまりしんみりしてるから、俺は「ギンブレーも連れて来りゃ、ちょうど良かったのによ」と戯けて言った。するとロシウはふふっと笑って「誘ったんですが『大グレン団メンバー水入らずのところにお邪魔なんてとんでもない!』って固辞するんですよ」と可笑しげに言った。そして「来年は連れて来ます」と言うと、キタンの墓標の前に座り込むキノンの方へ歩いていった。

ラブラブでよろしいな…と俺とアイラックがその背中を羨んでいると、キヤルがゾーシィに何やら噛み付いているのが見えた。

「ニアの分もねーじゃん!」
「ニアはいいだろ、こんだけ周りに花が咲いてんだぜ?」
「それとこれとは別!」
「あーもー面倒くせえ…」
「面倒臭いぃい!?」

そうだ、ニアへの花束もすっかり忘れてた。すると今度はガンバイクがすうっと青空を横切って飛んできた。ガンバイクは俺たちの頭上へ達しようとしたが、眼下の賑やかさを見てくるりとUターンした。誰が来たんだ?俺は目を細めたが分らなかった。けど、現役パイロットのギミーが大声で呼び止めた。

「ヴィラル!おーい!」

ヴィラルだあ?全員に見上げられて、ガンバイクはフルスピードでシティの方角へ飛び去ろうとする。ギミーはすうっと息を吸い込んで,声を張り上げた。

「逃げんのかよ、ヴィラル!戦士らしくねーぞっ!」

するとガンバイクはぴたりと静止し、のろのろとまたターンして、渋々戻ってきた。俺たちは爆笑したかったが、また逃げ去られると何なので、必死に笑いを噛み殺した。降下したガンバイクから、むすっとヴィラルが降りてくる。その手には白いおおきな花束が握られていた。ヴィラルは早足にニアの墓の前へ歩み寄り、そっとその花束を置いた。そしてしばし、墓標へ無言のうちに言葉をかけると、くるりと踵を返してさっさとバイクへ戻ろうとした。

「おい」

怖いもの知らずなギミーが、その背中を呼び止めた。

「何だ」
「カミナの墓にも手、あわせていけよ」
「ふざけるな。今日は俺にとっては、チミルフ様の命日だ」
「ふーん」
「ふーんとは何だ」

いろんなことに動じないマッケンが、居合わせる全員に杯を配ってまわった。そしてレイテが酒を注いでいく。立ち去り損ねたヴィラルにも杯は配られ、ヴィラルが握りにくそうにする杯にレイテは上手に酒を満たした。ギミーは杯を高く掲げて、全員を見渡した。

「えーっ、じゃっ、大グレン団、3代目リーダーの俺が音頭を…」
「4代目だろ!」
「えっ、キタンは自称リーダーだろ?」
「お前は4代目なの!」
「ちぇっ…、じゃあ4代目の俺が音頭を取らせてもらいます!」

キヤルから横槍が入ったものの、ギミーの奴は堂々と胸を張り、カミナの墓の方を向いた。そして敬愛を込めて名を呼んだ。

「カミナ。キタン。…それから、ニアさん」

そうして言葉をとぎらせ、くるりと俺たちの方へ向き直って、ガキの頃から変わんねえ、茶目っ気いっぱいの笑顔で言った。

「それと、まあ、ついでにチミルフにも。乾杯!!」

ついでとは何だああっとヴィラルが叫んだが、全員が大声で「乾杯!」と唱和するのに驚き、皆がぐびぐびと酒を呷るのをきょろきょろ見回してから、そそくさと杯に口をつけた。キヨウとキヤルが酒のつまみをひろげはじめる。その豪華さに「旨そうだ!」「旨そうだな!」とジョーガンとバリンボーが興奮してる。
少し寂しくなったけど、新しい面子も入ったし、4代目もなかなかやるし、これからも楽しい集いになりそうだ。いや、命日が楽しい集いじゃマズいか。いや、いいよな。他でもねえ、カミナの命日だからよ。

見上げる空に、白い月が浮かんでいた。俺はこの場にいない、シモンとヨーコのことを思った。きっとどこでどうしていても、奴らは今日の日を忘れてねえだろう。俺たちは毎年、同じ日に同じ奴のことを思う。それはちょっと、いいことに思える。8年経ったから、そう思えるんだろうけど。

視線を戻すと、ゾーシィがキヤルに使われて、ピクニック気分のビニールシートを地面に敷いている。その上へ、ジョーガンとバリンボーが料理を載せる台を置く。キヨウとキノンは料理を並べ、ちょっと所在無さげなヴィラルに、これまた何をしていいか分らないロシウが近付いていって何か喋り、それにリーロンが混ざって三人で笑う。テツカンは手伝うふりしてもう食ってる。アーテンは手伝おうとして皿をひっくり返す。俺はそんな奴らを順に眺めて、やたら幸せな気分になった。

カミナ。俺は胸のなかで初代リーダーへ感謝を捧げた。俺がいま持ってるもん全部…、いや半分ぐらいは、お前のおかげだよな。ありがとな。

「キッドー、お前も手伝え」

皿を並べながら、アイラックが俺を呼ぶ。俺は「あいよ」と答えて、杯に残っていた酒を飲み干した。
| 2010/05/20 |